客員起業家(EIR)制度とは?メリットとデメリット
日本政府は経済活性化に向けて下記3つの好循環を目指しています。
参考: 2023年版 中小企業白書・小規模企業白書(令和5年4月/中小企業庁)
- 国内投資の拡大
- イノベーションの加速
- 賃上げ・所得の向上
そうした中、2023年6月に客員起業家(EIR)制度の活用に関するガイダンスが経済産業省から告知されたので、この客員起業家に関してまとめます。
参考:新規事業・スタートアップ (METI/経済産業省)
客員起業家(EIR)制度とは?
EIRはEntrepreneurs In Residenceの略です。
直訳は「在籍して事業を起こす人々」。
Entrepreneurは「新しい事業を創造しリスクに挑戦して行動する人」という意味があります。
制度の目的は、資料によると下記となっています。
「日本のスタートアップ企業創出のために起業を志す人と企業を繋げてイノベーションを加速する。」
一言でいうと起業準備段階として、組織に所属しながらそのリソースを使い、軌道に乗ったら創業するというイメージです。
社内ベンチャーとは違い、外部の人と契約します。
副業として片手間で関わるのではなく、基本的にフルコミットします。
技術的な種(シーズ)を持っていて経営人材が不足している大学とニーズがマッチしている制度です。
企業側や大学側のメリット
- 外部の人脈や経営ノウハウを利用でき、学べる。
- 契約期間を限定できるので、失敗してもリスクが少ない。
- 社内の意識改革と活性化に繋がる。
- 専門家に丸投げして「何とかしてくれる」という楽できそうなイメージ。
客員起業家側のメリット
- 安定した収入を得ながら、自身の能力を試す場所にできる。
- 時間を対価にリスクゼロでお金、経験、人脈が得られる。
- 最先端の研究者と知り合う機会となる。
- 目的と手札が明確なので動きやすい。
問題となりそうなこと
制度設計が大事ということが経済産業省の資料にも記載されていますが、下記のような問題が今後浮き彫りになってくると思われます。
- 企業や大学は経験豊富な経営者を選ぶので、制度の趣旨である起業を志す人が選ばれない。
- 人脈と段取りがうまい人がお金を稼ぐ場所になり、イノベーションが起きない。
- 企業や大学がリスクを最小化しようとして、起業家が嫌になる。
- 事業を成功したときの起業家側のリターンが少ないので、モチベーションの維持が難しい。
繰り返しになりますが、こうしたことが起きないように経済産業省の資料に取り組み事例が記載されています。
参考:客員起業家(EIR)制度の活用に関するガイダンス
まだ制度として新しく、今後失敗や成功事例を踏まえて、より制度の品質が高まってくると思います。
個人的にフルコミットは熱意重視で選び、メンターとして経験豊富な起業家を利害関係のない立ち位置に置くのをガイダンスとして盛り込まれてほしいなと思っています。
いずれにしても、起業する前にステップを挟むことは、石橋を叩いて渡る日本の気質に合っていると思うので、選択肢の一つとして広まればと思います。