自分本位の商品、サービスの落とし穴

起業するにあたり最初に重要になるのが、テーマを何にするかです。
具体的には、自分の商品、サービスのコンセプトです。

昨今は、細分化の時代、いわゆる専門店の時代です。
昔のように何でも買える総合デパートではなく、一つの分野の商品、サービスに特化した専門店でないと市場のニーズに応えられないのが現状です。

例えば、IT業と言ってもWEBページ制作、WEB広告、企業の業務システムの開発など様々ですし、システム開発の中でも建設業界、物流業界、医療業界など細かく分ければキリがありません。
特にスモールビジネスの場合は、対象を絞り込んでその中で強みを発揮することが求められますから、コンセプトをどこに定めて商品、サービスを作るかは極めて重要なポイントとなります。

 

ここで気を付けなければならない点があります。

それは、自分本位の商品、サービスを作ってはいけないということです。

もっと簡単に言うと
「こんなのがあったら良いだろうな」とか
「世の中もっとこうあるべきだ」
というような起業家自身の思いや理想をコンセプトにしてはいけないということです。

起業する時、誰でも自分の夢を実現したいという思いが強くなってしまうのですが、自分の思いや理想を出発点に考えてしまうと落とし穴にはまってしまいます。

もっと端的に言うと、市場に理解されず、顧客を作り出せない可能性が大です。
つまりは、売れない商品、サービスになりやすいということです。

なぜなら、
「こんなのがあったら良いだろうな」
「世の中もっとこうあるべきだ」
と言った思いや理想は、単なる起業家の独りよがりに陥りやすいからです。
仮に、大きな資本と強力な宣伝力があれば乗り越えられるかもしれませんが、スモールビジネスには適していません。

起業で大事なことは、まず市場と顧客のニーズです。
「こういうモノを欲しがっている企業や人がいる」
「こういうことで困っている企業や人がいる」

しかし、今のままでは不十分だから、自分が新しく商品やサービスを作って世の中に提供したい、しなければならないという発想で臨まなければなりません。

 

分かりやすい例を挙げましょう。

例えば、私はプレゼンテーション講師として起業しました。
プレゼンテーションのニーズがあるのは、提案型の営業が必要なIT、ゼネコン、設備機器などの技術系企業が中心です。
ですから、それに合うように企業研修という商品を作り、提供しています。

それを
「一般の家庭の中でもプレゼンを取り入れるべきだ」
「家庭のコミュニケーションも本来プレゼンだから家族向けプレゼンテーション研修があったら良いだろう」
と言って商品を作っても、それにお金を払うお客さんはまず見つからないでしょう。

ちょっと極端な例だったかもしれませんが、実際にはこうした起業家の独りよがりのコンセプトから商品、サービスを考えてしまうことは決して少なくありません。

起業に対する熱い思いをちょっと脇に置いてみましょう。
そして、それを必要としている顧客がいるかどうか冷静に考えてみましょう。

売れない理由は、実は自分の足元にあることがほとんどなのです。

このコラムは協議会メンバーが執筆しています。
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