DXはデジタル経営戦略と訳した方がいい
「御社でのDXの現状は?」
こんな事を聞かれたら何と答えるでしょうか?
年末年始の挨拶回りでDXという言葉を聞くようになりましたが、心の中で「それはただのデジタル化だから!」と叫ぶことがありましたので、 今回はDX(デジタルトランスフォーメーション)について解説したいと思います。
DX=デジタル化の勘違い
DXと聞いて経営者の方は下記のような事を思い浮かべると思います。
- 紙の印刷をなくしPDFでやり取りするようにした。
- 打ち合わせをオンラインで行うようにした。
- テレワークを導入し出社しないようにした。
これらは今の業務をITに置き換えただけで本質的に何も変わっていません。
こうしたDX誤解がある現場では往々にして下記のような不満が出てきます。
- 紙の方が一覧性があって便利。
- 直接会わないと熱が伝わりづらい。
- テレワークでできる業務ではない。
- コミュニケーションが希薄化する。
- 勤務状況が把握できない。
何を目的に行うかを説明しないまま「とにかくDXだ!」と言ってもお金と時間の浪費に終わってしまいます。
DXが理解されず氾濫しているのを政府も把握していて、2021年11月末に経済産業省所管の独立行政法人情報処理推進機構(IPA)はDXポータルサイトを公開しました。
ここの動画で「DX=デジタル技術でビジネスモデルや働き方を変えること」と説明されています。
動画内で補足説明されていますが、この言葉だけだとオンライン会議=DXというのを肯定しているので、誤解はまだまだ続きそうだと感じてしまいます。
(数年前に比べるとかなり分かりやすくなっています)
DX=デジタルを活用した鎖構造の経営戦略
では、冒頭での「御社でのDXの現状は?」を言い換えてみましょう。
「御社ではデジタルを活用してどのような課題解決に取り組んでいますか?」とすると答えやすくなると思います。
ペーパーレス化やオンライン会議など1つの業務で考えるのではなく、組織全体を意識するのがDXです。
ITを活用し余った人・お金・時間で何をするか?がDXで問われているのです。
例えばDXの現状に対する回答例として
「コロナで出社できない課題をオンラインシステム導入で解決し、そのノウハウをお客様に提案し受注に繋げている」
経営課題 → デジタル活用 → 課題解決 → 新しい価値
この一連の流れがDXに取り組んでいるということになります。
新しいビジネスモデルや働き方改革と結びつける必要はありません。
つまりDXはデジタルを活用した経営戦略だと言えると思います。
ペーパーレス化やオンライン会議は経営戦略の1つの鎖であり、それを1つ1つ組み合わせた鎖構造がDX(デジタルトランスフォーメーション)へ至るという認識が必要です。
継続的な改善と強力なリーダーシップ
2018年に政府が公表したDXレポートでは「とにかくレガシーシステムを刷新してDXしよう!」という論調だったのに対し、 2021年のレポートでは段階的な変革プロセスへと変わっています。
- 平成30年9月7日 DXレポート ~ITシステム「2025年の崖」克服とDXの本格的な展開~(METI/経済産業省)
- 令和2年12月28日 デジタルトランスフォーメーションの加速に向けた研究会 中間とりまとめ(METI/経済産業省)
繰り返しになりますが、DXはデジタルを活用した鎖構造の経営戦略ですので、 まずは経営課題を分析し正面から向き合うことが初めの一歩です。
DXも経営戦略だと考えれば、進めながら改善を重ねていくというのも理解できるのではないでしょうか。
さらに「ITは苦手」と担当者や外部に丸投げするのではなく、経営戦略としてトップが強力なリーダーシップを発揮することが必要ということも伝わればと思います。