共創で「途中でやめる」ことは、失敗ではない

1.はじめに

起業家同士の共創(協業・コラボ・事業提携などを含めた広い概念を指します)において、「途中でやめる」という選択は、どこかネガティブに受け取られがちです。

  • せっかく始めたのに
  • ここまでやったのに
  • やめたら関係が壊れそう

こうした空気が、共創の現場には少なからず存在します。
しかし、実務の現場で数多くの共創を見ていると、むしろ逆のことを強く感じます。
やめられない設計こそが、一番危険。これが、現場から見た実感です。

 

2.共創がこじれる原因は「やめられないこと」

共創がうまくいかなくなる場面を振り返ると、最初から対立していたケースは、実はそれほど多くありません。

多いのは、

  • 当初の想定と状況が変わった
  • 事業環境や優先順位が変わった
  • 関わり方に無理が生じてきた

といった、ごく自然な変化です。

問題になるのは、その変化が起きたときに、「やめる」「方向転換する」という選択肢が、最初から用意されていなかったことです。

その結果、

  • 不満を抱えたまま続けてしまう
  • 本音を言えなくなる
  • 責任の押し付け合いになる

といった状態に陥り、最終的には関係そのものが壊れてしまいます。

 

3.「やめる話」は、あとからでは遅い

共創の途中で、「この形、少し厳しいかもしれません」と切り出すのは、かなり勇気がいります。すでに、

  • 時間もお金も投下している
  • 周囲に発表している
  • 感情も動いている

そうした状況では、冷静な話し合いはどうしても難しくなります。

だからこそ重要なのが、利害が一致している「始める前」にきちんと話し合って「契約書」に明記しておくことです。

始める前であれば、

  • うまくいかなかった場合
  • 前提が変わった場合
  • 方向転換が必要になった場合

についても、比較的フラットに話すことができます。

 

4.撤退・方向転換を前提にした方が、共創はうまくいく

実務的に見ると、共創は「必ず成功する前提」で設計するよりも、撤退や方向転換も起こり得る前提で設計した方が、結果的に成功率が高くなるように思います。

理由はシンプルです。

  • 無理をしなくて済む
  • 早めに軌道修正できる
  • 本音を共有しやすい

つまり、心理的安全性が高い状態で共創を続けられるのです。

「やめてもいい」という余地があるからこそ、安心して挑戦できる。
これは、多くの起業家が体感していることではないでしょうか。

 

5.「やめ方」を決めておくことが、信頼につながる

「途中でやめる話をするなんて、相手を信頼していない証拠ではないか」
そう感じる方もいるかもしれません。

しかし、実務の現場では逆です。

  • 状況が変わることを前提にしている
  • 相手の事情も尊重している
  • 感情論にならない設計をしている

こうした姿勢こそが、長期的な信頼関係につながります。

共創とは、関係性を固定することではなく、変化に耐えられる関係をつくること。
そのために「やめ方」を決めておくのです。

 

6.「共創をはじめる前の契約書」という考え方

ここで重要になるのが、契約書の役割です。
契約書というと、「縛るもの」「守らせるもの」という印象を持たれがちですが、共創の場面では少し意味合いが異なります。

共創をはじめる前に作る契約書は、

  • 迷ったときの判断基準
  • 話し合いに戻るための土台
  • 感情が揺れたときの整理材料

として機能します。あらかじめ、

  • どんな場合に見直すのか
  • どういう手順で協議するのか
  • やめる場合、どう整理するのか

を言葉にしておくことで、「やめる=揉める」という構図を避けることができます。

 

7.やめられる設計があるから、挑戦できる

共創において大切なのは、最後まで続けることそのものではありません。

状況に応じて、

  • 続ける
  • 形を変える
  • 一度区切りをつける

こうした判断を、当事者同士が納得感を持ってできることです。

そのための土台として、共創をはじめる前の契約書があります。
やめられる設計があるからこそ、起業家は安心して挑戦できます。

 

7.おわりに

共創の成功は、運や相性だけで決まるものではありません。

実務の現場で見ていると、うまくいっている共創に共通しているのは、始める前に、きちんと言葉を交わし、その「思い」や前提を、書面として残しているという点です。

途中で状況が変わることや、方向転換・終了といった判断が必要になることは、共創において決して特別なことではありません。

だからこそ、利害が一致している「始める前」の段階で、共創をどう進め、どう見直し、どう整理するのかを、「共創をはじめる前の契約書(例:業務提携契約書、共同開発契約書、共同事業契約書)」という形で言語化しておくことが、後々の信頼関係を支える土台になります。

この先の話を、もう少し詳しく聞いてみたい方は、2月28日(土)に開催される以下のセミナーにて、実例やワークを交えながら、具体的な条文例や契約書の取り交わし方を含めて、やさしく・分かりやすく解説します。

共創を始める前に、何を、どこまで整理しておけばよいのか。

その考え方を、知的財産の専門家と「共創」しながら、契約と知財の両面から、実務目線でお伝えする予定です。

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