オープンイノベーションの極意とは?~ 中小医療機器メーカーが外と組むということ~
医療機器業界においても「オープンイノベーション」という言葉は、近年すっかり定着しました。
大学との共同研究、スタートアップとの連携、海外メーカーとの協業など、その形は様々です。
元々オープンイノベーションは2003年、ヘンリー・チェスブロウ氏(ハーバード大学)が「オープンイノベーション」の概念を提唱し、社外資源の活用を戦略として位置づけたことより始まりました。
それ以前の動きとしては既に1990年代頃から、ゼロックスのPARC(マウスやGUI技術)やApple(スティーブ・ジョブズによる外部技術の活用)など、戦略的な外部連携の動きは見られていました。
その後、GoogleのAndroid買収やFacebook(現Meta)のInstagram買収など、外部のアイデアや技術を取り込むことで、GAFA※1の隆盛となり大手IT企業が成長しました。
日本の事例では花王が大学発ベンチャーと連携して郵送検査サービスを共同開発するなど、大手企業が事業戦略として組織の垣根を超えた協業を近年重視するようになっています。
※1「GAFA(ガーファ)」とは、Google(グーグル)、Apple(アップル)、Facebook(フェイスブック、現Meta)、Amazon(アマゾン)の4社の頭文字を取った造語で、世界的に巨大な影響力を持つ米国のIT大手企業群を指します。
これらの背景と具体例が複合的に作用し、現代のビジネス環境に於いて「オープンイノベーションが起こる」土壌が形成され、戦略として広く浸透してきた訳です。
一方で、中小の医療機器メーカーにとって、外と組むことは決して簡単な選択ではありません。
品質、法規制、供給責任、知的財産権、そして何より患者の安全を最優先としなければないこと等枚挙にいとまがありません。一度手を抜けば、取り返しのつかない結果を招く世界だからです。
だからこそ、医療機器におけるオープンイノベーションには「極意」があります。
極意1.「協業相手と役割分担を明確に、自社が最後まで責任を持つ領域を明確にする事」
医療機器は、開発・企画だけで終らず承認・認証取得、製造品質維持(GMP)、検品、安定供給、改良対応、市販後品質管理(GVP)等長期にわたって責任を果たし続ける覚悟と仕組みが必要となります。
これ等を体系的に管理するシステムとしてQMS※2を構築し、それをベースに業許可を活かしてビジネスを進めている訳です。
医療機器の根幹である「製造販売業資格」の元製造業や販売業を持つ大手企業と協業するという事です。
※2:QMS(Quality Management System:品質マネジメントシステム)とは、企業や組織が製品・サービスの品質を継続的に維持・向上させ、顧客満足度を高めるための仕組みやシステムのことです。方針の策定、計画、実行、評価、改善(PDCAサイクル)を通じて、品質目標を達成し、組織全体の信頼性向上を目指すものです。医療領域ではISO 13495などが代表的な国際規格として広く使われています。
同時に役割分担した各企業のメリットを明確にして開始することで、その後トラブルは未然に防げます。
手法的には「自社が担うべき“核=根底技術”上で、不足する技術、スピード、発想を外部と掛け合わせる」という事でしょうか。この順序を間違えると、協業はうまくいきません。
極意2. 「役割の違いを尊重する事」
スタートアップとの協業では「スピード感を重視」し、大学との協業は「技術的知見の深さ」を認識して、海外企業との協業は「スケールの大きさ」意識して、小野野の特徴を尊重する事です。
一方で、中小医療機器メーカーは自身が持つ資格を十分活かし、現場で培った信頼、品質への執念、粘り強さを武器に協業の場に臨む事です。
極意3.「対等な条件で協業をする意識を持つ事」
中小医療機器メーカーはどうも大企業を前にすると何となく下請け根性が出てしまい、仕事欲しさに条件を度返しにした協業と成り兼ねません。この点は厳重注意です!
対等とは「同じ事をする事ではなく」、違いを認め、役割を分ける事です。この関係が築ければ協業は競争ではなく「価値共同創出」に変わります。
極意4.「成果を急ぎすぎない事」
医療機器のオープンイノベーションは、短期的な結果よりも、信頼の蓄積がものを言います。
小さく始め、試し、失敗を共有できる関係をつくる。
上手くゆかないことも共通の課題として認識し、改善し更なる高みを目指す!このような関係構築を継続し、その積み重ねが、将来の大きな成果を生むことになります。
極意5.「経営者の覚悟」
最期はこの極意に尽きます。協業には必ず摩擦が生じます。
規制、コスト、文化の違い、判断の衝突などなど、その時、経営者が現場の盾となり、責任を引き受けられるかどうかが成否を分けると思ってください。
オープンイノベーションとは、外部に答えを求めることではありません。
自社の強みと責任を深く理解した上で、外の力と掛け合わせ、新たな価値を生み出す営みです。
「自社の確固とした軸を持って開く」それこそが、中小医療機器メーカーにとってのオープンイノベーションの極意であると私は考えています。
この極意の基本は医療機器に関する企業のみならず、他領域の中小企業が大手企業や大学やスタートアップ企業とのオープンイノベーションを行う際の指針になると考えています。