契約書や覚書の読み方のコツ、専門家に相談する際の注意点

契約書や覚書は、様々なビジネス文書の中でも、とりわけ法律的なことばかり書かれているため難しいというイメージをお持ちの起業家の方も多いかもしれません。
補足までですが、法的な内容が書面に記載されていれば、契約書と覚書との間に効力の優劣はありません

詳しくはこちらのコラムをご参照ください。

さて、契約書の専門家として、起業家皆さまのご相談に対応する中で、契約書や覚書をよく読んでいなかったがために、金銭的な損害を被ってしまった後悔への反省や、今後そのような後悔をしないために、契約書周りをしっかりとしておきたいというお話が、実は非常に多いです。

起業家の皆さまがこのような後悔をしないために、今回は、契約書や覚書の読み方のコツ、そして専門家に相談する際の注意点について、少しばかり解説します。

 

契約書や覚書は、現実に発生している取引が言語化されたものです。
といっても、イメージが掴みづらいのが契約書や覚書の難しいところ。

起業家の皆さまにとって身近な、モノの売り買いをするときに使われる、売買契約書を例にとってみます。
売買契約書は、おおよそ以下のような構成になっています。

  • 本件商品   :買主が、売主から実際に買うモノの具体的な品番、単価
  • 納期     :売主は、買主にいつまでにモノを納めればいいか
  • 検査条件   :売主から納められたモノに対する、買主による検査基準
  • 所有権移転  :モノの所有権(買主が自由に使ったり転売できる権利)が売主から買主に移転するタイミングのこと。検査合格と同時のことが多い
  • 支払条件   :売主から買主への請求書発行のタイミング。買主から売主への代金の支払期日
  • 契約不適合責任:モノに不具合があった場合の売主の責任(≓保証)
  • 損害賠償責任 :取引において損害が発生した場合の責任

このように、契約書や覚書は、商談成立~代金支払~その後までのストーリーが書かれたビジネス文書と言い換えることができます。

当然ながら、このストーリーは、法的な義務が伴っていますので、売主にせよ、買主にせよ、契約書や覚書に書かれていることは、確実に実行しなければなりません。
もし、実行されないと、相手から訴えられたり、裁判所から差押えなど方法により、自分の財産が強制的に取り立てられたりしてしまいます。

契約書や覚書は、小説などのトーリーと違って、法律的な言葉や言い回しが使われているため、難しく感じてしまいますが、「ここに書かれていることを確実に実行しないと大変なことになる」と思うと、真剣に読み込まなければならない重要なビジネス文書であることがお分かりいただけるのではないでしょうか。

その際、契約書や覚書の字面だけを追っていってもイメージが掴みにくいでしょうから、

  • モノ
  • お金
  • 実際にやり取りをする担当者

などに着目し、それらの「動き」を実際に思い浮かべながら読み込んでいくのがコツです。

また、契約書や覚書では各登場人物の略称として「甲」や「乙」が使われることが多く、これが読みづらい原因となっていることがあります。
そういった場合には、ワープロソフトの一括変換の機能を利用して、「甲」「乙」を別の言葉(例えば「売主」「買主」な)に置き換えてみると驚くほど読みやすくなることがあります。

大きな取引をする際などに、契約書や覚書のことで専門家に相談する際にも注意が必要です。

専門家は、法律関係のプロであって、商売のプロではありません。

取引は相手あってのものです。
その取引がストーリー化された契約書や覚書も当然ながら、相手との関係性の中で成り立ちます。

従って、

  • 取引するモノの特徴
  • 相手との関係性、パワーバランス
  • 自社事業での位置付け

などの背景を、専門家に事前にきちんと説明しておかないと、意図するようなアドバイスが得られない可能性が高いです。
説明が難しいのであれば、ヒアリング能力に長けていたり、意図を汲んでれるという視点から、相談する専門家を選ぶと良いでしょう。

後悔先に立たず。
起業家の皆さまの何かのお役に立てば幸いです。

 

このコラムは協議会メンバーが執筆しています。
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