契約締結日をいつにするか
1.はじめに
起業家の方から、
「取引先と契約書を取り交わしたいのだが、締結日をいつにしたらよいのか?」
という趣旨のご質問をいただくことが多いです。
契約の取り交わしの際、関係当事者全員が集まって調印式のようなセレモニーを行うのであれば、その日にすれば済みます。
ただ、実際にセレモニーが行われることは希であり、現実には最終合意した契約書類のやり取りで行うことが多いことから、上記のようなご質問が多いのだと推測します。
2.最後の当事者の押印日を締結日に
電子契約の場合は、同日に電子署名(電子的なハンコ)を行うことは容易です。
ただ、まだまだ実務上利用の多い紙の契約書での取り交わしのケースでは、通常、先に押印する当事者と、後に押印する当事者との間で、タイムラグが生じるのが通常です(郵送で紙の契約書のやりとりをする場合には、なおさら)。
実務上は、後に押印する当事者(当事者が3者以上いる場合は最後に押印する当事者)が押印する日を契約締結日とするのが通常です。
3.契約の取り交わしよりも先に実際の取引が始まってしまっている場合の対処法
上記2.は、契約の取り交わしを済ませてから実際の取引が始まるケースを想定しています。
しかし、現実には、契約の取り交わしよりも先行して実際の取引が始まってしまっていて、いわば後付け的に契約の取り交わしを行うケースも少なくありません。
こういったケースでは、締結日を実際の取引を始めた日付に遡らせる、つまりバックデートではなく、現実に即して成文化する観点から、締結日と効力発生日(有効期間の始期)とを区別して、以下のような条文を追加して設けるのがベターです。
第●条(本契約の効力発生日)
本契約は、締結日にかかわらず、2023年○月○日に遡って効力を有する。
4.紙の契約書に押す印鑑について
契約締結日のことと同時にご質問いただくことが多いのが「紙の契約書に押す印鑑はどれにすればよいのか」というものです。
こちらについては、契約の当事者が法人の場合も個人の場合も実印(印鑑証明書で本人の印鑑による印影であることを証明できる印鑑)で押印するのがベストです。
いわゆる「認印」での押印でも、契約自体は成立することが多いですが、後に相手から「そんな契約書にハンコを覚えはない」と言われてしまった場合、実印が押されている場合に比べて第三者から効力が弱いと解釈されてしまうケースも想定されます。
5.おわりに
契約書に一度ハンコを押してしまうと「なかったこと」にするのは、困難を極めます。
今回は、契約の形式面のことを解説しましたが、重要なのは中身ですので、他のコラムなどもご参照の上、くれぐれも慎重に対応するようにしましょう。