税務調査で残念な結果にしないための5つのポイント

例年であれば、この時期は税務調査の最盛期です。
ところが新型コロナウイルスの影響で、多くの企業の業績が低迷し、感染防止のため税務調査自体も控えめな傾向です。

逆に言えば、税務調査が来ない今だからこそ、来るべき税務調査に備えて、税務調査で残念な結果にしないための5つのポイントを整理されてはいかがでしょうか?

 

1.税務調査は討論大会ではない

社長が、税務調査で立ち会う場合に最初に注意していただきたいのが、討論大会だと勘違いし、相手を論破しようとすることです。

もちろん、調査中に論破する必要性がゼロではないのは事実ですが、そもそも税務調査官は社長と議論するために来ているのではありません。
狙いを定めた取引の証拠があるかないかの収集を黙々とやりに来ていると言っても過言ではありません。

相手を論破しようとする社長は、力みが入りすぎて「絶対に」「必ず」「極力」という言葉をよく使います。
しかしながら、そういった言葉を多用すればするほど、裏になんかあるのではないかと疑われます。
相手の出方を用心深く観察し、終始ポーカーフェイスでお願いしたいですね。

 

2.即断即決は厳禁である

即断即決は仕事ができる人間の特徴であり、もてはやされる傾向があるように思います。
しかしながら、税務調査で即断即決は厳禁です。

しかも、税務調査は、実は天王山ではなくあくまでも前哨戦に過ぎないということです。
そして通常の調査であれば、調査官に最終的な決定権限が与えられていないというのも意外と知られていないようです。

調査官には、担当上司(通常は副署長クラス)がいて、この方が最終決定権限を持っています。
税務調査後、担当上司に調査内容を報告し、指摘事項を一覧にまとめて会社に提示してからが、実は本番なので、最終決定権限のない調査官に対して即断即決する必要はないのです。

もちろん、自信をもって回答できる内容は、その場で答えてもらって構いません。
問題は、即断即決しなければならないという変な使命感で、熟慮せず回答した内容が困るのです。

「おそらく」「たぶん」といったあいまいな回答は、きっと裏になにかあると勘繰られてしまいます。
自信のないものは、あとから調べて回答しますということで必ず先送りにしてください。

 

3.必要最低限のこと以外はしゃべらない

技術系ではなく営業畑出身の社長に多いのですが、とにかく沈黙がいやで、聞かれてもいないのにしゃべりたがる方がいます。

趣味の話に夢中になりすぎると、税務調査官としては、私的なものが経費化されていないか気になりますし、故郷の話に花が咲けば、私的に故郷を訪れていないかも気になります。

また、取引内容も事細かに話したがるのも困ったものです。
「例外的に」「ごくまれに」といった感じで、イレギュラーなケースにまで言及すると税務調査官としては、どうしても興味をひいてしまいます。

余計なことをしゃべらなければ、気づかずに見過ごしたかも知れないのに、ここ掘れワンワンとばかりに相手に手の内を全て見せるのは、いかがなものでしょうか?

 

4.いい人を演じる必要はない

人は誰でも初対面の人に、自分はいい人だと思われたいものです。

いい人だと思われたいがために、税務調査官に対して「長い付き合いだから申し訳なくて」とか、「助けようと思って」という言葉が出ないように気を付けてください。
税務調査は調査官と良好な人間関係を築くことではなく、いい人を演じれば、税金が安くなるというものでもないのです。
いい人を演じようとする態度や回答が、事業関連性のない利益供与をしているという疑いを持たれます。
もちろん適正に申告処理されていれば、何の問題ありませんが、そうでない取引が必ずあるハズだという疑いを持つようになります。

 

5.税務調査官を本気にさせない

税務調査中に「なんで、ウチは儲かっていないのに調査するんだ」と文句や不満をぶちまける方がいます。

そうなる気持ちもわからなくもないですが、仮に得意先から自社の文句や不満をいわれたら、まじめな社長であれば、ただ頭を下げるだけでなく、どこが満足していないのか、満足するためにはどうしたらいいのかを知るべく、得意先に必死に食い下がって話を聞こうとする筈です。

税務調査も同じです。
税務行政に文句をいうということは、払うべき税金を逃れようとしているに違いないという感じで、税務調査官のやる気に火をつけてしまうことになります。

税務行政の不満は、税務調査ではなく、飲み屋で愚痴をこぼす程度にしてください。

 

終わりに

税務調査では、何気ない一言や対応の仕方で傷口が深くなっていくことが多いものです。
特に社長の回答は、会社の公式見解ですので、後で訂正しようとすると逆に変な疑いがもたれるものです。

意外と知られていませんが、税務調査で社長が終日立ち会う必要はありません
税務調査に慣れていないのであれば、税務調査で社長は顔見世程度、あとは顧問税理士に全て任せて終日外出している方が、上手くいく場合が多いように思います。

もちろん、税務調査で顧問税理士に全てお任せするにしても、社長は顔見世程度に立ち会ってもらう必要がありますので、税務調査で残念な結果にしないための5つのポイントを整理して、落ち着いて税務調査に臨んでください。

このコラムは協議会メンバーが執筆しています。
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