自作契約書の凡ミスを防ぐ簡単な方法

「起業時は何かとお金がかかるから、契約書はコストをかけずに自作したい!」
と考える起業家や経営者の方も多いと思います。

そこで、契約書を自作する際の注意点をまとめます。

 

「白紙に一から作文していく」というのが理想ですが、これは困難ですので、ベースとなる契約書雛形を決めてアレンジしていくのが一般的です。

ここで、世の中に出回っている契約書雛形には、大きく分けて次の2パターンがあることに注意が必要です。

  • ①お金を受け取る側(売主、受託者など)に有利な条件が書いてあるもの
  • ②お金を支払う側(買主、委託者など)に有利な条件が書いてあるもの

ベースとなる契約書雛形を決める際には、まずは自分が①と②のどちら側に立つのかを判断し、その上で、慎重に選択していく必要があります。

その選択の際、官公庁や業界団体などが作成している書式があれば、それを活用するのがベターです。

検索エンジンで【○○業界 契約書】

と検索してみると、質の高い契約書雛形が安価(または無料)で提供されていることもあります。
ない場合には、市販の書籍や有料のダウンロードサイト等からピックアップするのがよいでしょう。

インターネット上に転がっている出所が不明な契約書雛形は、避けるのが無難です(上記①と②のどちらなのかを判断するのは難しい上に、もし誤って選択し締結までしてしまうと取り返しがつかなくなるのは容易に想像がつくかと思います)。

 

次に、上記で選択したベースとなる契約書雛形をアレンジすることになるのですが、とりわけ注意が必要なのは「甲と乙とを間違えない」ということです。

契約書の本文では、当事者を「甲」「乙」と略すことが多いですが、実はこれがかなりの曲者です。
私たちのような法律専門職を除いて、日常生活で「甲」「乙」を使うことはまれではないでしょうか。

しかも、契約書は日本語で書かれているとはいえ、難解な単語(法律用語)が使われている上に、特殊な日本語構造になっています。
「契約書に書かれている日本語は外国語みたいだ」と感じる方も多いのではないでしょうか。
読み慣れないと「理解した上で最後まで読み込む」というのは知力と体力を消耗し、ハードルは高いのです。

その結果、途中で「甲」と「乙」とが逆さまになってしまうエラーが生じることも。
自社にとって良かれと思ってアレンジした契約条件が、実は自社に都合の悪い条件になっていたという「凡ミス」は笑い話ではなく、実際によくあることなのです。

「他の契約書雛形で良さそうな文章を見つけたから、ベースとなる契約書雛形にコピペする」という場合は特に要注意です。実はこれが「凡ミス」の一番の原因です。

 

「凡ミス」を避ける方法としては、

「甲」「乙」→「当社」「お客様」

のように、「甲」「乙」と略すのをやめるというのが、最良です。

 

ワープロソフトの一括変換の機能を使えば瞬時でできます。
ビックリするくらい読みやすくなり、また、劇的に「凡ミス」が減りますので一度お試しください。

「契約書では甲乙を使いなさい」と法令等で決められているわけではなく、どのように略するかは自由なのです。
近年では、ショッピングサイトなどの利用規約などの対消費者向けの契約書を中心に、読みやすさを鑑みて「甲」「乙」以外で略すことが多くなってきています。

 

最後になりますが、契約書が活躍するのは、トラブル発生時のような「悪いこと」が起こってしまったときです。
その時はじめて自作した契約書を真剣に読んでみたら上述のごとくの「凡ミス」が発覚し、冷や汗をかくばかりか、多大な不利益を被ってしまった(例えば、会社が傾くほどの賠償金を支払うハメになってしまった)…といった体験談はしばしば耳にするところです。

このような残念な結果を避けるためにも、契約書を自作していて
「難しいな」
「思ったよりも時間がかかるな」
「こんなに神経を使うのなら他のことに時間を割きたいな」
とお感じになったら、専門家に相談されることをおすすめします。

このコラムは協議会メンバーが執筆しています。
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