覚書だと効力が弱い?知らないと損をすることも。契約書面のタイトルにまつわる誤解

1.はじめに

先日、起業されたばかりの経営者の方から「タイトルが覚書となっているので、ハンコを押しても契約にならないですよね?」という素朴な質問がありました。

 

2.「契約」とは?

起業家に限らず、ビジネスシーンにおいて目にすることの多い契約書。

「内容をよく精査せずに迂闊に契約書にハンコを押してしまうと、大きな責任を負うことになってしまったり、トラブルに巻き込まれることもあるので、後々後悔しないように細心の注意を払う」ということはよくご存知のことと思います。

そもそも契約は、「相手との約束事(意思の合致)」があれば成立します。

保証契約などの一部の契約を除いて、「契約が成立したら契約書を作らなければならない」とは、法律で定められておりませんので、原則として口約束だけでも契約は成立することになります。

 

3.なぜ書面にするのか?

この「口約束でも契約が成立する」というのが少々「曲者」です。

ビジネスにおいては、個人間の取引と比べて、金額や取引量が桁違いに大きくなりますので、「言った、言わない」「ボタンの掛け違い」などの契約の存否や契約内容の疑義にかかわるトラブルが生じると、場合によっては大きな損害が発生してしまう可能性もあります。そういったことが無いように、口約束のまま放置せず、約束した内容を書面にして残すのが通常です。

 

4.タイトルは自由に決めてよい

この約束が書かれた書面のタイトルは自由に決めることができます。その代表格が「契約書」というタイトルになります。その他にも、「覚書」をはじめとして、「合意書」、「協議書」、…etc様々なバリエーションのタイトルがあるという次第です。

 

5.「契約書」、「覚書」、「合意書」、「協議書」に上下関係はない

ここで、相手との約束事が記載された書面に「契約書よりも覚書の方が法的な効力が強い(契約書>覚書)」といったような上下関係はありません。

冒頭の話に戻ります。「タイトルが覚書となっているので、ハンコを押しても契約にならないですよね?」というのは、大きな誤解であることがお分かりいただけたでしょうか?

 

6.相手の思うツボになることも

確かに「覚書」と聞くと、「契約書」というタイトルに比べ、軽そうなイメージがありますが、実際はそうではありません。

繰り返しになりますが、「相手との約束事(意思の合致)」が書かれた書面であれば、タイトルが「契約書」であれ、「覚書」であれ、法的な効力は同じです

この「軽そうなイメージ」を逆手にとって、簡単にハンコを押してもらえるよう、意図的に「覚書」というタイトルにしているケースもしばしば見受けられます。

タイトルや先入観で判断せず、「中身をよく読んでよく精査してからハンコを押す」という姿勢が何より重要となってきます。

 

7.不安な時には専門家に相談を!

「契約書」、「覚書」、「合意書」、「協議書」…etcといった法的な書面は、日本語で書かれてはいるものの、独特な言い回しがあり、不慣れな方にはとても難しく感じられるようです。

これらの書面にハンコを押す際に不安に感じるようなことがあったら、身近にいる法律に詳しい専門家(弁護士、行政書士など)に相談し、内容をよく理解したうえでハンコを押すことをお勧めします。

このコラムは協議会メンバーが執筆しています。
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