こんな契約書を締結していませんか?大手企業に法務部がある理由

ハンコが押されている締結済みの契約書を拝見していて少々気になることがあります。
それは、細部までよく目を凝らしてみると、空欄の埋め方がアバウトであったり、間違っていたり、空欄のままであったりするケースが多いことです。

 

具体的には?

実際に私がよく目にする例を見てみます。

 

【共通】

  • 契約期間が空欄
    -「納期が定まっていない」と同義なことも
  • 検査基準が曖昧
    -通常の取引では「検査合格→請求書発行→入金」という流れ
    -基準が曖昧だと何度も「やり直し」をさせられてしまうことも。入金が遅れるばかりか、値下げの材料に使われてしまったり、最悪、入金されないケースもあり得る
  • 金額欄が空欄
    -納期に間に合わせるべく、金額交渉が済んでいないケースで発注を済ませるために契約書の取り交わしを先行させ、その後、金額が妥結したものの、契約書に記入するのを忘れてしまっているケースが多い
    -トラブルの元(契約書を取り交わす意味が無い)
  • 価格が消費税込みなのか、別なのか不明確
    -消費税額の改訂が予定(2019年10月)されているため、税込なのか税抜なのか明確にしておいた方が良い

 

【売買契約書】

  • 型番、数量、単価が違っている

 

【請負契約書】

  • 何をもって仕事を完成とするのか基準が曖昧

 

【コンサルティング契約書】

  • 提供を受けるサービスの内容・範囲がアバウト

 

【土地売買契約書】

  • 地番や面積が正確ではない
  • 「㎡」と「坪」が混在している

 

【ホームページ制作委託契約書】

  • どのような内容のホームページの制作を依頼するのかが明確でない(仕様が明確でない)

 

上記に挙げたのはほんの一例です。
「細かいこと」と感じるかもしれませんが、ビジネスにおいて一番重要な「お金」と直結する部分なのがお分かりでしょうか?
本来は一番シビアに考えなければならないところです。

 

なぜ契約書を締結するのか?

儲かる経営体質にするには「キャッシュイン」を適正化して、「キャッシュアウト」をいかに減らすかが重要といえます。

「売り手」目線で契約書を見てみると、これを具体化し具現化する手段こそが、契約条件であり、その総体としての契約書といえるのではないでしょうか。
特にビジネス系の契約書においては、上述の通り、契約条件の設定の仕方(空欄の埋め方)によって、「キャッシュイン」と「キャッシュアウト」の時期が大きく変わってくることがあります。

 

また、起業家の方は「キャッシュアウト」と言うと、まず仕入れが思い浮かぶと思います。
実は、顧客からの入金後も「返金」と言う形で「キャッシュアウト」しなければならないケースがあり、契約書の中には瑕疵担保責任(2020年4月の民法改正以降は「契約不適合責任」)や損害賠償責任、そして違約金といった条項で表現されます。
この部分の詳細条件を、取引前にしっかりと詰めて契約書でハッキリと線引きしておかないと、「キャッシュアウト」しなければならないシチュエーションが増えてしまうこともあり得ます。

 

したがいまして「儲かる会社」にするためには、契約書が必須といえます。

 

実際問題、なぜ大手企業は「法務部」という専門セクションを設置し、わざわざ大きなコストを掛けてまで契約書関係をガッチリ固めているのか。
上記のごとく「契約書には大きなコストをかけるだけのパワーがある」というのがその理由の一つです。

このコラムは協議会メンバーが執筆しています。
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