200円を貼れば大丈夫?起業家が知っておくべき印紙の話

「契約書の種類によっては、収入印紙(以下、「印紙」とします)を貼らなければならない」ことをご存知の方は多いことと思います。
起業家の方から、ときどき、「契約書にハンコを押す際には、種類を問わず、とりあえず200円の印紙を貼っておけば大丈夫ですよね…??」という趣旨の質問をいただくことがあります。

果たして本当でしょうか?

今回は、契約書と印紙にまつわるお話をさせていただきたいと思います。

ちなみに、収入印紙の他に、特許印紙や収入証紙などの金券もありますので、役所への提出書類に金券を貼る際には、どの金券を貼る必要があるのか事前によく確認してください。
一度貼ってしまうと、返金が困難となるケースもあります。

 

印紙の正体は?

そもそも、何のために契約書に印紙を貼る必要があるのでしょうか?
端的に言えば、それは、税金を納めるためです。

当然ながら、税金のことなので、印紙税法等の法令により、印紙を貼らなくてはならない文書と具体的な額が定められています。

くわしくは、国税庁のホームページ(印紙税関係→印紙税の手引)
https://www.nta.go.jp/publication/pamph/01.htm
をご参照ください。

印紙を貼るべき文書を作成したら、法令に基づく金額の印紙を貼るとともに、そこに印を押すかサインでの「消印」をすることで印紙税の納付となります。

蛇足ながら、印紙税の話をすると、「印税」のことと勘違いされる方がたまにいらっしゃいます。
印税はお金がもらえるものですから、嬉しいですよね。
いつか私も夢の印税生活をしてみたいものです。

このような紛らわしい言葉になったかといえば、かつては、本の裏表紙あたりにその本の著者の認印を押した「検印紙」を貼って、使われた検印紙の数に応じて代金(ロイヤルティー)が支払われるというローテクな手法が採用されていて、これが印紙税の納付に似ている事からこう呼ばれるようになったようです。

 

印紙を貼っていないとペナルティが課されることも

さて、冒頭の「…とりあえず200円の印紙を貼っておけば…」の話に戻ります。
これは誤りです。
詳しくは、上記リンク先にある『印紙税の手引』に従って、法令に基づく金額の印紙を貼る必要があります。

それでは、印紙を貼るべき契約書に貼っていないことが発覚したときは?

このときには、納付しなかった印紙税の額とその2倍に相当する金額との合計額(つまり、「本来印紙を貼るべき額」の3倍)に相当する過怠税を徴収されることがあります。
また、この過怠税は、その全額が法人税の損金や所得税の必要経費には算入されないこととされています。

最近は、ペーパーレスで契約を締結する(電子契約)機会も増えてきました。
印紙を「貼る」と表現しているように、紙で契約書を取り交わす場合には印紙を貼らなければならないケースも発生します。
裏を返せば、電子契約とすれば印紙代を節約ができるということとなります。
コロナ禍でのハンコレスとあわせて、今後、電子契約が普及していくものと思われます。

起業家の方の中には、「タイトルを契約書ではなく『覚書』や『協定書』にすれば印紙を貼らなくてよいのでは?」とおっしゃる方もいらっしゃるのですが、タイトルではなく中身に何が書いてあるのかが重要です。

 

一定額以上の領収書にも印紙を貼る必要が

それはさておき、印紙を貼らなくてはならないのは契約書だけではありません。
読者の方にとって一番身近なケースでいえば領収書。
一定額以上の領収書には印紙を貼らなければならないとご記憶されている方も多いのではないでしょうか。

この「一定額」について、従来は記載金額が3万円以上とされていましたが、2014年4月からは「5万円以上」に変更されています。
詳しくは、上記国税庁ホームページをご参照ください。

貼らなくてよい領収書にまで印紙を貼ることがないようにしたいものです。
未だに3万円台、4万円台の領収書に200円の印紙が貼ってあるケースが見られます。

 

おわりに

金銭の借入を行うケース(金銭消費貸借契約書)や建物の建築を依頼するケース(建築請負契約書)などでは、印紙税の額が高額になることがあります。

もし、それらの契約書に印紙が貼られていないと、上述のようなペナルティが課せられてしまうことがありますので、上記の国税庁ホームページで最新の法令を確認したり、税務署や専門家に相談するなどして、慎重に対応するとともに、正しい額の印紙を貼るようにしてください。

このコラムは協議会メンバーが執筆しています。
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