2021/10/17 投稿

起業時に契約書を作っておくメリット

行政書士大森法務事務所 代表 大森靖之

起業時は、商品開発、資金調達、営業活動…などに追われ、契約書のことまでなかなか時間がとれないかもしれませんが、起業時こそ契約書を作っておくメリットが大きいです。
契約書の専門家として、これまで数々の起業支援をさせていただいた経験を踏まえ。本項では、そのメリットについてシェアしたいと思います。

起業から2、3年経過後、起業家の方に、
起業時に契約書を作っておいて良かったか?と
ヒアリングをさせていただくと、「本当に良かった」とおっしゃっていただけるケースがほとんどです。
その理由を一言でまとめるとすれば「信用力のなさを契約書の存在によってカバーできたから」というものです。

 

起業時は、私自身にも経験がありますが、営業活動において信用力のなさでとても苦労します。
見込み顧客から質問されるのは、
「実績は?」
「何やってくれるの?」
「本当にできるの?」
といったものです。

この不安や疑問を払拭できない限り、受注に至らないケースがほとんどです。
業種・業態を問わず、起業においてはここが一番苦労するところなのではないでしょうか。

起業時から契約書を準備している方にヒアリングすると、どうやら、この苦労をあまり経ることなく、順調に契約数を伸ばしているようなのです。
商談の時に、契約書をサッと出すことによって、しっかりした会社というイメージを最初に持ってもらえるところがまず大きいように思われます。

ここで、契約書のそもそも論を考えてみますと、起業家がお客様にしなければならない義務、逆にお客様に請求できる権利がしっかりと書いてある書類です。
この権利や義務がごまかしなくきちんと言語化されているところが、見込み顧客の安心感へとつながっています。
逆に、この権利や義務が曖昧になっていると、受注に至らない、契約が取れない原因にもなり得ます。
顧客に提供する価値、メニュー、価格などが曖昧なまま起業して、何となく営業活動をしているケースも、契約書の観点から見れば、実は多いのです。

では、起業時に作成する契約書において特に注意すべきポイントはどこか。
これまでの経験を踏まえ、特に重要な3つを以下に解説します。

 

① 提供する商品やサービスを具体的に詳細に記載する

当たり前のことのように思われる方もいらっしゃるかもしれませんが、ここが曖昧なケースが実は非常に多いのです。
特にサービス業の契約書(業務委託契約書、請負契約書、準委任契約書が該当)においては、受注業務の範囲を明確にしておくことが、「労力」に対する然るべき対価を得るためにとても重要なところです。
契約書本文に書ききれない場合は、別紙として仕様書を添付するなどの方式も要検討です。

 

② 支払条件を明確に記載する

起業時は限られた資金で可及的速やかに事業を安定軌道に乗せなればなりません。
資金繰りが非常に重要です。
特に「前払い」を希望する場合には、契約書にきちんとその旨を記載しておくことが必要です。
支払条件が曖昧で、資金繰りの目処が立たず、残念ながら事業の継続を諦めざるを得なかった起業家をこれまでにたくさん目にしています。
支払条件はとても重要です。
可能な限り早く現金化できる方策を常に考えておくべきです。

 

③ 対応可能な納期を記載する

起業時は現金化を焦るあまり、無茶な納期設定をしがちです。
納期に間に合わなければ、最悪、損害賠償や違約金を請求されてしまうことも考えられ、そこまでに至らなくとも信用はガタ落ちで、継続しての発注はいただけなくなってしまうケースがほとんどです。
また、起業して間もない頃はすべてがはじめての経験で、想定外のことも数多く起こります
顧客が待ってくれるギリギリの線で納期設定をした方が良いケースが多いかと思います。

 

以上、起業時に契約書を作成するメリットを解説してきましたが、起業した段階で、消費者から経営者に立場が180度変わります。
すべてが「自己責任」の厳しい世界となります。
自らを守るためにも、契約書をきちんと作っておくことが重要です。

「契約が思うように取れない」
「変なお客様に当たってしまって酷い思いをした」
などが良い勉強の範囲でおさまればいいですが、とにもかくにも限られた起業資金があるうちに、一刻も早く安定軌道に乗せなければならないのが、起業の一番難しいところです。
起業が成功する可能性を高める意味でも契約書の積極的かつ戦略的な利用をおすすめしています。

このコラムは協議会メンバーが執筆しています。
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