起業時こそ契約書が必要な理由
1.はじめに
商工会議所のような公的機関にて、
- これから起業しようと検討中の方
- 起業して間もない方
向けの「契約書の作り方セミナー」などでお話をさせていただくこともあるのですが、どうやら、契約書をとても遠い存在に感じる起業家の方も多いようです。
今回は、起業時こそ契約書が必要な理由について、お伝えしたいと思います。
2.起業家の喫緊の悩みと盲点
起業検討中の方や起業して間もない方の喫緊の悩みとしては、
- 見込み客にアプローチすること
- 仕事を取ること
- お客さんを増やすこと
が挙げられます。
私自身も起業を経験しておりますので、お気持ちはよく分かります。
しかし、重要なのは、まずは、取ってきた仕事を完遂すること。
そして、お客さんから、期日までに入金されることなのではないでしょうか。
手元に現金がなければ、まず生活がままなりません。
そして商売上においても、まず材料や商材が調達できない、そして、オフィスの家賃が払えない、従業員への給料が支払えない…等々、早々に立ちゆかなくなってしまいます。
商売上、営業やマーケティングが重要なのはもちろんですが、商売を続けて行く上では、手元の現金を確保しておくことがとても大切です。
手元の現金が底を尽き、方々で期日までの支払がままならない…これではせっかく夢をもって起業しても「倒産」に追い込まれかねません。
契約書は、この手元の現金と密接に関わっています。
それゆえ、起業時こそ、契約書が必要となってくるのです。
3.契約書は現金の動きが書いてある
契約書は「現金の動き」が書いてあるものとも言えます。
現金の動きについて記載してある、主な契約条件とそのチェックポイントをまとめておきます。
①代金額/報酬額
- 正確な金額が記載されているか
- 違った金額が記載されていたり、空欄の契約書が驚くほど多い(不正確な記載はトラブルの元)
- 記載された金額は税込なのか、税抜なのかを明記する
②支払条件
- いつまでの納品分(締め日)について、いつ振り込まれてくるのか明確にする
- 「納品から30日以内の支払」とするのが一つのめやす
- 「持ち出し」や「費用」が発生する取引の場合には前金も検討(起業資金は限られているので、このような場合はできるだけ前金にする)
- 前金とする場合には、契約書に具体的な前金額を明記する
③検査条件
- 意外な盲点
- 売買、請負、委託等の取引形態を問わず、買主or委託者(お金を支払う側)が、納品されてきた商品orサービスに対して「検査合格」した後でなければ、請求書が発行できないのが一般的
- お金を支払う側による検査が遅くなると、「請求書が発行できない=入金も遅れる」ことになるので、検査期間や検査条件を明確にしておく
④損害賠償/違約金
- これらの条項は、入金された後の「キャッシュバック」の側面も
- 高額な損害賠償や違約金が設定されている場合は注意する
- 商品やサービスの「不具合」に自社の落ち度が無い場合、損害賠償/違約金の請求(クレーム)に応じる必要がないことを明記する
案件毎にきちんと契約書を取り交わされている起業家の方は、現金の動きの予測が上手で、順調に業績を伸ばしている印象があります。
上記①~④の契約条件が曖昧、あるいは、そもそも契約書を取り交わしていないとなると。
- いつまでに入金されるか見通しが立たない
- 自社に落ち度のない不具合まで損害賠償or違約金が請求される(入金されたあともくらキャッシュバックすればいいのか分からない)
となりかねません。
不安定な経営を強いられます。
上記は、あくまで一般論です。
契約条件は相手方との関係性や具体的な取引内容によって、変動します。
もし、ご心配な方は身近な専門家にご相談ください。
4.さいごに
(当たり前の事ではありますが…)仕事をとってくれば自動的に現金が振り込まれるわけではありません。
上記のチェックポイントをご参照の上、契約書を活用いただき、皆さまの起業が成功されることをお祈りいたします。